ヒメフウロ/図鑑に載っていないピンクの小さな花。宮崎でも分布を拡大中?

植物

宮崎市内の山道を車で走っていると、道路脇にピンク色の小さな見慣れない花があった。フウロソウの仲間のようだけれど、図鑑にも載ってない……と思ったところでピンとくるものがあったので、もしやと思って調べてみると、やはりヒメフウロのようだ。

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ヒメフウロ

姫風露
学名 Geranium robertianum
フウロソウ科フウロソウ属の一年草または越年草。本州中部や四国の自生地では石灰岩地に生える。この地域からの国内外来種もしくは園芸種の逸出として分布を広げているようで、稀に道路脇などに見られる。全草から塩を焼いたような特有の匂いがすることからシオヤキソウの別名がある。

ヒメフウロの全草

細い茎をヒョロヒョロと分岐させながら高さ3〜40センチほどにこんもりとしげる。写真は花が終わる頃の株で、もともと緑色だった茎や葉が赤みを帯びてくる。

図鑑で紹介されているような「塩焼き草」たらしめる特異な匂いは、葉っぱなんかを揉むと多少は匂ってくる。しかし多くの人がそうであるように僕も塩を焼いた経験がないため、その異名の適否は判断しかねる。

ヒメフウロの花

花と実。
花はピンクいろで直径が1cmに満たないくらいの大きさで、萼片の方が若干大きい。
多くの場合、花柄をY字に伸ばし、その先に1つずつ合計2つの花(もしくは実)がセットでついている。アメリカフウロなどは、もっと多くの花が密集しており、ヒメフウロのおとなしい雰囲気とはずいぶん違う。

花のアップ。
おしべの葯(この写真ではあいにく2つしか残っていないが)の色は写真のように黄色いものから赤みの強いものまであるらしく、ささいなようだがずいぶん違う花に見えて戸惑う。

 

実はいかにもフウロソウの仲間という感じの、一本ヅノがズンと突き出した鬼のような見た目。アメリカフウロだとこれが密集して剣山のようになるが、ヒメフウロの場合はやはり2つずつ。

ヒメフウロの茎、葉

茎は緑で、花期が終わりに近づくと赤みを帯びてくる。全体に毛が生える。葉が対生し、その付け根部分は少し膨らむ。

 

葉は羽裂し5つの小葉に分かれて見える。先端は丸みを帯びていて柔らかい印象がある。この葉の形もアメリカフウロとはずいぶん異なる。

おまけ/宮崎のヒメフウロ

環境省のレッドデータ検索システムなどで見るかぎり、ヒメフウロは宮崎はおろか九州に分布していないことになっている。おそらく扱っているのが「純粋な在来種」として本州と四国に分布しているヒメフウロのみなのだろう。同様に九州の植物図鑑にも載っておらず、さらに外来種としても新参者の部類のために帰化植物図鑑にも見当たらない始末(あくまで僕が持っている版での話)。八方塞がりである。

それでは、どうして今回の花がヒメフウロだと当たりを付けられたか。

実は数年前に祖父母が宮崎県内の別の山で見つけていて(宮崎で1例目)、その話を聞いた記憶が頭の片隅の錆び付いて開きにくくなった引き出しに入っていたのだ。当初は当然ながらかなり珍しかったはずだが、今日に至って僕が発見できちゃうくらいには、じりじりと分布を広げてきているらしい。いずれアメリカフウロのようなありふれた花になるかもしれない。

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