フモトスミレ/地上茎なし。白いすみれ。個体差が大きくてむずかしい。

スミレ

毎年毎年、一春のあいだじゅうずっとスミレに向き合い続けて、身近で見られるスミレは大体網羅して「どんな奴でもかかってきやがれ」とばかりに伸ばした天狗の鼻を、それはもうポッキポッキと痛快に折ってくるのが、フモトスミレだ。なんでもござれの個体差で、いかにも珍しそうに生えているけど、調べてみたらやっぱりフモトだった、というトラップに20回ほど引っかかったころに、春は終わりを迎えると言い伝えられていたりいなかったりする。

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フモトスミレ

麓菫
学名 Viola sieboldii
スミレ科スミレ属の多年草。地上茎なし。日当たりのいい崖の法面にも、薄暗い林床にもみられるが、フモトの名の通り、ある程度自然度が高い場所を好む。葉にも花にも変異が多く、宮崎の場合は分布が重なり生息環境も似ているコミヤマスミレとの鑑別が第一に必要である。

フモトスミレの全草

変異が多いので、いろんなパターンでお届けします。

こちらは針葉樹林の暗い林床に群生していた株たち。地上茎はなく、株元から直接花柄や葉を展開する。葉を水平に展開して広々とした陣取り方。

こちらは暗い広葉樹林の林床に一株だけ咲いていたもの。えらくこじんまりとしている。

これは日当たりのいい崖の法面の株。葉っぱはどこ?って聞きたくなるほど小さく、ほとんど花柄だけのように見える。

ちなみにその葉っぱと一円玉の比較。小せえ~。日当たりがいいからあんまり光合成を頑張らなくてもいいのかしら。

フモトスミレの花

日当たりのいい崖のもの。白い花弁で、側弁と唇弁には濃紫色の脈が入ってきれい。側弁には毛が生える。この個体は側弁が開き切らず、キュッと痩せたウサギのように見える。

コミヤマスミレと識別するうえで重要なのが、萼片の部分。コミヤマスミレは萼片が反り返り、かつ有毛であることが多い。一方フモトスミレの萼片は反り返らず(花弁にぴったりくっついた状態)、無毛である(ことが多い)。

比較的側弁が開いているもの。

上弁にはっきりと紫のすじが入っているもの。一見すると別物みたいだ。

フモトスミレの茎、葉

茎は無く、葉は写真のように長心形のものから、より丸い心形、円形に近いもの、または三角形に近いものまでさまざま。緑色は濃いものが多い。写真ではわからないが、表面基部に若干の毛が見られる。これも、無毛のケースがままある。

葉の裏面は紫色を帯びるものが多いが、淡緑色の個体もある。反対にずっと赤色味が強く光沢があるほど、という場合もある。

先の上弁まで紫色だった株の葉。このように葉に白い斑(ふ)が入るものもあり、これらを「フイリフモトスミレ」とする向きもある。これについてはもう少し写真が貯まってから、いつか別ページでまとめようと思う。

ヒメミヤマスミレについて考える。

ヒメミヤマスミレssp. boissieuana は、フモトスミレV.sieboldii の亜種として記載されているが、このあたりの区別は、こと南九州においては難しい。
典型のヒメミヤマスミレの特徴としては

  • 葉の鋸歯が粗い
  • 葉は心形で毛は無いか、ごくわずか。
  • 葉の裏は紫色を帯びない
とされているが、南九州では「葉が披針形」で「裏面が紫色を帯びる」ものも見つかっていて、残す特徴は鋸歯が粗いかどうかというまったくもう頼りない鑑別点だけであるし、そもそも亜種であることから察せられるように、フモトスミレとの中間型も存在する。

あるやらないやらわからないヒメミヤマスミレだが、一応宮崎県南部で「ヒメミヤマスミレか、そうでないにしてもフモトスミレとの中間型かな?」という個体を見つけたので貼っておく。

針葉樹林内の沢近く。

花の側弁は有毛。唇弁が妙に小さいのが気になる。

萼片は無毛で反り返らないため、コミヤマスミレではない。

問題の葉っぱは、大きさのわりに鋸歯が大きく粗く見える。図鑑で見る典型的なヒメミヤマスミレの葉の形にかなり近い。

しかし葉の裏を見ると、薄いものの紫色を帯びているのがわかる。この点を踏まえて、ひとまずヒメミヤマスミレとフモトスミレの中間型としておこうと思う。

(´・ω・)むずかしいぜ……

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