田んぼの近くを歩いていたら、ハナイバナが咲いていた。青白い小さな花である。いくら宮崎とはいえ、もう12月だというのに、よくまあ元気にしているもんだ。
ハナイバナの類似種としてよく図鑑で取り上げられるのが、キュウリグサだ。葉を揉むとキュウリのにおいがするから、というなんとも安直な由来を持つ。ハナイバナもキュウリグサもどちらともムラサキ科に属する。
そこでちょっと気になるのが、
(。-`ω-)「ハナイバナも揉めばキュウリのにおいなのだろうか……?」
という問題。この問題を解決すべく、ハナイバナを揉んで参りました。
ハナイバナ
葉内花
学名 Bothriospermum zeylanicum
ムラサキ科ハナイバナ属の1〜越年草
5~30cmで低地~山地の畑地、道端など生息
ハナイバナの全草
茎は直立し中部で分岐、斜めに枝がのびる。全草と言いつつも、この写真に写っているのは枝の部分。
ひょろりひょろりと枝を四方に伸ばしている。高さは15cmほどになる。
ハナイバナの花
ハナイバナの花は花序の先端に一つ二つ咲く。キュウリグサの花序が巻くのに対して、ハナイバナの花序は巻かない。というか、巻けるほどたくさんの蕾が並んでいないとも感じられる。花序のすぐ下に苞葉がある。白、光の当たり方によっては青白く見える。
花のどアップ。五裂した合弁花で、丸っこい花弁。淡い青色をたたえているのがわかるだろうか。とても小さく、直径2㎜ほど。葉と葉の間に花をつけるから、葉内花(はないばな)の名がついた。
ハナイバナの茎、葉
写真は苞葉(ほうよう)といい、花柄の付け根から出る小さな葉で、大きさは1cmに満たないくらい。枝より下の茎の部分には、これをそのまま大きく(2~3cm)した葉がついている。ただし、苞葉には葉柄がほとんどない一方、根出葉や下方の葉には柄がある。
枝のようす。花後に残った萼(中には実が隠れている)と、苞葉が等間隔でぽつぽつと配置されている。
茎から、葉、萼(がく)まで上向きの毛に覆われている。
枝の先端の方に花序があるが、ハナイバナの苞葉はその直下まで苞葉がつく。一方のキュウリグサは、それよりも手前で苞葉が途絶えてしまう。
こちらが件(くだん)のキュウリグサ。托葉が花序の直下では欠けている。花序が巻き、同時に咲く花数はハナイバナより多いことが多い。花の青みも若干ハナイバナより強い。
ハナイバナを揉むとキュウリのにおいがするのか?
さて、冒頭で述べた「ハナイバナはキュウリのにおいか」問題、その真相を究明しようではないか。
と、その前に、まず分類について。ハナイバナは「ムラサキ科ハナイバナ属」、対してキュウリグサは「ムラサキ科キュウリグサ属」とされている。両種は属レベルで違うということになる。
では揉んでみよう。
キュウリグサならいざ知らず、ハナイバナに生まれた身としちゃあ、いかなる事情で揉まれてるんだかまったくもう腑に落ちないことであろう。許せハナイバナ。
(;゚Д゚)キュウリだ……!
明らかなキュウリ臭! キュウリ臭はキュウリグサの特権ではなかったのである!
これで、「キュウリのにおいがするからキュウリグサ」なんて識別がナンセンスであることが確かめられた、だけではない。
先にも述べた通り、キュウリグサとハナイバナは属レベルの違いがある。そして属の異なるハナイバナでもキュウリ臭がしたという事実。すなわち、キュウリ臭がキュウリグサ属に限られないということ。これはつまり、ムラサキ科のすべての植物がキュウリ臭を放つかもしれない、という新たなおそろしい仮説が生まれたことを意味するのである! オオルリソウもミズタビラコも、すべてである!
というこの仮説を実証するため、金輪際僕に見つかったムラサキ科植物たちは、哀れにもことごとく揉み揉みされてしまうことだろう。
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